
Mina Daimon — 浜 — BEACH
浜で名前を持つ者は少ない。度々顔を合わせて話をしていても名前を知らない。私が「サミー」と呼ぶ漁師がいる。年の離れた友人から「サミー・デイビス Jr. みたいでしょ」と紹介されたので、それ以来彼はサミーである。
浜で過ごしていると、名前など無くても、自分が何者であるのかも話す必要など無いように思えてくる。
2014年、茅ヶ崎の海辺近くに移り住んだ。茅ヶ崎の海というと湘南の華やかなイメージが浮かぶかもしれないが、私が住むのは黒い砂浜、荒っぽい相州弁の飛び交う漁村のようなところである。
海から受ける恩恵は大きい。魚が新鮮だ、景色が良い、といったことだけでなく海がそこにあるというだけで生活自体が変わるのだ。
朝、浜へ行く。 浜へ行くと必ず知っている誰かに会う。会って二言三言、言葉を交わす。「明日は波が良さそうだ」とか「週末に大会があるから見においで」とか。
浜に行けば、誰かがいる。誰かと会う約束をしているわけではないが、浜に導かれるようにしてやってくる。
ここで暮らす人は、皆それぞれの「浜」を持つ。幼い頃「またあとで」と手を振るだけで、またいつもの公園で会えたように身体的に誰かと繋がっていることのできる場が浜なのだ。
この浜の日常を、残しておきたい。記憶をただ積み上げるように、でもかけがえのない日常を撮ることが、この浜や、浜で出会った人々へのほんの少しの恩返しだと思っている。
Exhibition:Canon Gallery Ginza, Osaka, Nagoya / 72 Gallery / Chigasaki City hall
Book:”HAMA” AKAAKA-SHA











